木は、わたしたちにとって身近な材料であり、昔から木の家に住み、木の道具を使って暮らしてきました。
奈良県は県の面積の約77%を森林が占めており、川上村や黒滝村、東吉野村といった吉野地域では林業が盛んで、今も良質な木材が育てられています。
奈良の代表的な木はスギとヒノキです。奈良の林業の歴史は古く、室町時代から植林が行われており、大阪城や伏見城をはじめ、城郭や社寺・仏閣といったさまざまな建築物に利用されてきました。その多くが現在もなお美しい姿を維持しており、奈良の木の品質の高さを垣間見ることができます。
今でも優れた特長から人気があり、全国各地から買い手がつくほど。そんな奈良の木と暮らすメリットをご紹介します。
▼家づくりに適した「奈良の木」の特長
▼住まいを健康的な環境に!「奈良の木」の健康効果
▼「奈良の木」の家が増えています
▼奈良の木の家づくりに興味のある方へ
家づくりに適した「奈良の木」の特長
奈良の木は強さと美しさを兼ね備え、快適な暮らしにも役立つ木材です。次のような特長があります。
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❶優れた強度性能
奈良の木は、年輪幅が狭く、密度が高いことから、一般的なスギ・ヒノキに比べて強く、たわみにくい特長を持っています。それは数値にも表れています。スギの「ヤング係数(※1)」の全国平均値はE70ですが、奈良県産材の平均値はその1.3倍のE90。ヒノキの場合はE110であり、こちらも全国平均値を上回っています。優れた強度を有していることは、台風や地震に耐えうる家づくりをするうえで、重要な要素です。
※1 材料の変形しにくさを表している係数のこと。
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❷節が少なく年輪幅が均一で
真っ直ぐな木目吉野地域の林業では、1ヘクタール当たり8,000本から10,000本も植林されてきました。密植することにより、幼齢期に幹を太らせずに高さを真っ直ぐに伸ばすことができます。その後、間伐を繰り返すことによって、節が少なく年輪幅が密で均一な木になります。これによって、強さと美しさを兼ね備えた木材をつくることができます。
写真提供:吉野中央木材株式会社 -
❸美しい色合いとほどよい木の香り
吉野特有の土壌成分から、吉野スギの心材は、赤み混じりの上品な色合いです。吉野ヒノキは繊細で品のある淡いピンク色が絶妙に映えます。また、木の香りがほどよく、色が染み出にくいことから、日本酒の酒樽や仕込み桶として重宝されるようになりました。木の家づくりにおいても、暖かい色合いや木の香りが人気のポイントです。
写真提供:吉野中央木材株式会社
住まいを健康的な環境に!「奈良の木」の健康効果
奈良の木は他の材料より、健康的な暮らしに役立つ材料です。奈良県が行った実証試験により、次のような特長がわかりました。
❶菌が増えにくい
奈良県産スギ・ヒノキの精油を寒天培地に添加し、大腸菌を接種して生育状況を観察したところ、大腸菌の増殖を阻止。このことから、抗菌効果の高い精油を含んでいる奈良県産のスギやヒノキは、食器やまな板などの用途に適していると言えます。
❷カビが生えにくい
奈良県産スギ・ヒノキの精油を寒天培地に添加し、中央にカビを接種して生育状況を観察したところ、カビの生育を抑制。このことから、奈良県産のスギやヒノキを内装材として使用することで、カビによるアレルギー疾患(喘息・アトピーなど)を軽減できる可能性があります。
ダニの平均侵入率(%)
❸ダニの忌避効果がみられる
奈良県産スギ・ヒノキの板(心材部分)とカーペット生地をヤケヒョウダニが生息する環境に置き、侵入したダニの数を数えたところ、スギ材・ヒノキ材に侵入したダニは、カーペットの1/6〜2/3。このことから、奈良県産のスギやヒノキを床材として使用することで、ダニによるアレルギー疾患(喘息・アトピーなど)を軽減できる可能性があります。
抗ウイルス平均活性値
❹ウイルスの感染力が低下
奈良県産スギ・ヒノキの木粉、ポリプロピレンの粉、鉄粉、これらの材料にウイルス液(インフルエンザウイルスA型)を接触させた後、ウイルスの感染力をそれぞれ測定したところ、スギ・ヒノキの木粉の抗ウイルス活性値(※2)が高くなりました。このことから、奈良県産のスギやヒノキを室内に使用することで、インフルエンザの感染拡大を軽減できる可能性があります。
※2 抗ウイルス活性値は、値が大きいほど感染力のあるウイルスを減らす効果があることを示す。
❺紫外線を吸収して減らす
奈良県産スギ・ヒノキの板に光を当てて、光の反射量を測定したところ、白内障や加齢黄斑変性の原因とされる紫外線やブルーライトの反射が少ないことが確認されました。このことから、奈良県産のスギやヒノキを室内に使用することで、目に優しい部屋になります。
❻室内の湿度を調整する
奈良県産スギ・ヒノキの板を温度23℃相対湿度40%で調湿した後、高湿度環境(80%)で2日間、低湿度環境(40%)で2日間置き、その間、板に含まれる水分量を測定したところ、湿度が高いときは湿気を吸収し、湿度が低いときは湿気を放出し、自然と湿度を調整することがわかりました。例えば、8畳の部屋の天井板に、奈良県産のスギやヒノキを使用すると、1リットル以上の湿気(水蒸気)を吸い込む計算となります。
❼臭気を減らす
密閉性の袋に奈良県産スギ・ヒノキの板と臭気ガス(アンモニア)を入れ、袋の中のガス濃度を一定時間ごとに測定したところ、スギ・ヒノキとも、アンモニアの臭気を10分で8割以上、30分で9割以上除去しました。このことから、奈良県産のスギやヒノキをトイレなどに使用することで、気になるニオイを減らします。
❽触っても冷やっとしない
奈良県産スギ・ヒノキの板を手で10秒間触り、手の表面温度をサーモグラフィーで測定したところ、スギ・ヒノキは、材料温度が高くても低くても、人の肌には適温と感じることがわかりました。このことから、奈良県産のスギやヒノキは、人の肌が直接触れる床や手すりに適した材料と言えます。
20℃の材料を触った後の手の温度
別の角度からの測定として、熱の移動量(接触冷温感)も調べたところ、触ったときに温かく感じる順は、サーモグラフィーによる測定と同様に、カーペット生地>スギ材・ヒノキ材>プラスチック>ステンレス板>アルミニウム板の順でした。
「奈良の木」の家が増えています
「奈良の木」の家は、家族にもやさしい
木材は、衝撃を吸収する働きが大きいため、床や壁に使用することで、足の負担を減らしたり、転んでも大事に至らない安全性をもたらします。また、熱伝導率が低いため、体から熱が逃げにくく、温もりがあります。育ち盛りのお子さまからお年寄りまで、家族に優しい素材です。
床・壁だけでなく、家具やキッチンにも木を使うことで柔らかな空間に。
和室に木をふんだんに使うことで、格式と落ち着いた雰囲気をもたらします。